広告主・広告会社・クリエイター・メディアの“異種格闘技”が、マーケティングの未来をつくる

デジタルテクノロジーの進化を背景にマーケティングが高度化・複雑化し、打ち手ごとの専門性が高まっている。そうして進んだ部分最適化が、マーケティングの成功を阻む一因になっているのではないか?専門性を極めたプロフェッショナル同士が有機的につながり、膝を突き合わせて議論することで、さらに素晴らしい成果を得られるのではないか?——そうした考えの下で発足したのが、Borderless Marketing Community(BMC)だ。この発足を記念した基調講演に、理事を務める4人が登壇。広告主、広告会社、クリエイター、メディアという異なる立場を代表する理事の対話を通して、マーケティングに存在する分断の存在を明らかにしつつ、分断を解消した先に実現されるマーケティングの将来像について意見を交わした。

【登壇者】
(写真右から)
 メディア代表:日本テレビ放送網株式会社 黒崎太郎氏
 広告主代表:三井住友カード株式会社 佐々木丈也氏
 広告会社代表:カゼプロ株式会社 戸練直木氏
 クリエイター代表:螢光TOKYO/DESIGN BOY 手島 領氏
 データ分析代表:株式会社サイカ 平尾 喜昭氏 ※ 基調講演には不参加
 モデレーター:株式会社宣伝会議 谷口 優氏
【開催日】 2022年2月21日(月)
【開催形式】オンライン開催(zoom)
【テーマ】 「分断が引き起こすマーケティング課題とボーダレスが実現された未来」

 

分断1 広告主×広告会社
「プロデューサー不在」が分断の大きな要因

谷口 デジタルの普及を背景に顧客接点が爆発的に増え、マーケティングの打ち手も多様化・複雑化しています。マーケティングがカバーする領域が広がるにつれて関わる人も増え、その人の立場によってマーケティングの定義が異なる――そんな状況が、今回のディスカッションテーマである、マーケティングの「分断」を生んでいるようにも思えます。

さまざまな「分断」がありますが、まずは広告主と広告会社の分断について、理事の皆さんの見解を伺っていきたいと思います。

三井住友カードさんは、顧客を中心に据え、オフライン/オンラインの垣根を超えた統合的なマーケティングを推進されています。その中でさまざまなパートナー企業とのお付き合いがあると思いますが、そうした企業との関係性について、どんな課題やお考えをお持ちですか。

佐々木 「分断されているものをつなぐ」ことの難しさを、常に実感しています。マス、デジタル、リアルなど打ち手ごとに専門性を持つパートナーに支援いただいていますが、そうやって個々にお願いしていると、各施策をつないでトータルの顧客体験として見たときに、私たちが意図したのとは違う結果が生まれてしまうリスクも多々あるように思います。

そうなってしまわないように、個々のパートナーには、我々が中長期的に実現したいと考えているゴールを伝えた上で各施策に落とし込んでもらうよう意識しています。

「広告主が広告会社に依存してしまう」という話がよく聞かれますが、プロフェッショナルの力を最大限に活かすには、広告主が目的や意思を明確にし、主体性を持つことが不可欠だと思います。広告会社にお任せしすぎて自社にノウハウが溜まらない、自分たちで施策を評価できない、というのは最も良くない状態。プロフェッショナルの力を組み合わせて施策を展開し、広告主としてそれをしっかりと評価してフィードバックを行い、次のアクションや他の施策に活かせる示唆を与えてもらう。そういう関係性が理想ですね。

戸練 打ち手ごとに専門性を持つ人材・会社が増え、それぞれの専門性はますます研ぎ澄まされていく一方、さまざまな打ち手を統合してクライアントに提案する“プロデューサー”的な役割を担える人材は決して多くないのが現状です。これは、広告会社の大きな課題ではないでしょうか。

僕は、広告会社においてその役割を担うべきは、営業担当なのではと考えています。カゼプロでも、広告クリエイティブ、商品企画・開発、メディアプランニングなど、さまざまな専門性を俯瞰で捉えて組み合わせてクライアントに提案するのは、営業の仕事です。

谷口 手島さんはクリエイターのお立場から、広告だけでなく、動画、静止画、空間、音楽など表現方法や媒体の垣根を超えて、ボーダレスにお仕事されていますね。クリエイターも、メディア別の「CMプランナー」「コピーライター」といった従来の肩書きを超えた、統合的なコミュニケーションのプロとしての役割を求められているように思います。

手島 そうですね。昔は、「これは広告で、これは広告じゃない」「これはマーケティングで、これはマーケティングじゃない」といった区分がありましたが、最近はそういう垣根がどんどんなくなってきている気がします。

肩書きを飛び越えて仕事をすることに、初めは怖さもありましたが、「コピーも書くし、演出コンテも書く」ということをやっているうちに、自分が闘える新しい土俵が次々と見えてきて、今に至ります。

でも、「統合コミュニケーション」と言ったとき、すべて自分でできるわけではありません。自分でできる部分は自分で手を動かし、自分ができない部分は最適な人をアサインして、コミュニケーション全体を組み立てていく。クリエイターが、アサインされるのを待つだけではなく、アサインする側にもなる。そういう時代になっていると感じます。

谷口 黒崎さんは、広告主と広告会社の関係を客観的にご覧になって、何か感じることはありますか。

黒崎 広告主・広告会社の皆さんは、世の中の変化に対応するスピードが速いです。そのため、私たち地上波テレビ放送局も、その素早い変化にいかに適応していくかが課題だとあらためて思います。

「統合マーケティング」という言葉に代表されるように、広告・マーケティングの選択肢が多様化する中、日本テレビの営業部隊も体制を変えつつあります。これまではスポット/タイムで部門を分けていましたが、3年前に「総合営業センター」に統合し、一人の渉外担当がすべての商品を担当できる体制に移行したのです。

やるべきことはまだまだ多くありますが、生活者ファースト・顧客起点でさまざまな対応ができるよう動いている点では、広告主・広告会社の皆さんと同じ目線を持てているのではないかと思います。

谷口 コネクテッドTVやアプリでの配信など、放送局のコンテンツを生活者に届ける方法が増えるに伴い、新しい広告商品も次々と生まれていて、ますます提案が難しくなっていますよね。

黒崎 そう思います。最近、「生活者が必要とする映像メディアサービス」について調査を行いました。利用頻度や利便性などで評価してもらったところ、1位は皆さんご存じの「YouTube」、2・3位はVODサービスの「Netflix」「Amazon Prime」。4・5位にようやくTVerや地上波テレビも出てきましたが、若年層ではテレビより上位に「TikTok」が入りました。

生活者の中ではあらゆるメディアがフラットになっていて、便利なら使うし、そうでなければ使わない。興味深いと言うか、ある意味当然の結果でもあるのですが、この現状を正確に捉えて対応していくことで、広告主・広告会社にとって魅力的なメディアであり続けなければと考えています。

分断2 広告主×クリエイター
「目標とその達成度の共有」が分断解消の鍵

谷口 次は、クリエイターと広告主の間の「分断」についてお話を進められればと思います。三井住友カード・佐々木さんは、広告賞の受賞歴も多い敏腕“宣伝部長”という顔を持ちながら、データドリブンマーケティングにも積極的に取り組んでいるデジタルマーケターでもあります。広告主企業のマーケターのマインドシェアがこれまで以上に「広告・宣伝」「クリエイティブ」以外にも広がる中、マーケターとクリエイターのコミュニケーションが難しくなってきているのではないかと推察しているのですが…。

手島さんは、広告主と協働する上で難しさを感じていることや、上手く協働するために意識・実践していることはありますか。

手島 オリエンでは、オリエンシートにずばり書いてあるKPIよりも、クライアントが持っているゴールイメージをできるだけ齟齬なく理解できるようインタビューしています。「この商品のシェアを何%アップしたい」「この商品を、こんな新しいジェネレーションに届けたい」といった、大きなシナリオですね。クライアントがどこに行きたいのかを明確にした上で、ではそこに向けてどうするべきか?を自分なりに解釈します。

広告主は、どうしたって“我が子”がかわいいものですから、「自社の商品・サービスをどんなふうに謳ってくれますか?」という話法で話します。そこで僕が心がけているのは、その商品を店頭で手に取る人、その商品のテレビCMを見る人など「生活者がどう感じるか?」という視点と、商品・サービスの特徴とを演繹して、ふさわしいストーリー・世界観を見つけることです。そうしないと、広告の効果があがらず、商品も売れず、「クリエイターを変えよう」という残念な結果になってしまいます。

谷口 コミュニケーションのコンテンツというアウトプットをつくり出すクリエイティブ力だけではなく、その商品を手に取るお客さまのニーズや気持ちに寄り添い、想像するところから、クリエイターの仕事は始まるのですね。

戸練 かつての広告会社では、マーケターとクリエイターが完全に分かれていて、「マーケターがある程度考えた上でクリエイターにパスする」という流れになっていました。

しかし、手島さんの話からも感じるのが、今はクリエイターがマーケター寄りになっていたり、逆にマーケターがクリエイター寄りになっていたりするということ。マーケターとクリエイターの境目がファジーになってきているのが、最近の傾向だと思います。そして、その境目が曖昧なほうが、いいチームになるし、いいプレゼンができるし、いいクリエイティブを生み出せる感覚がありますね。

佐々木 手島さんのお話にもあったように、広告主は、自分たちが実現したいこと、目的意識をクリエイターにお伝えすることが大事だと思います。クリエイティブの話となると、オリエンする側は、なぜか短期的な目標ばかりを示してしまいがちです。しかし、たとえ短期的な目標を設定するキャンペーンだとしても、中長期的なゴールや構想を理解した上で取り組んでいただくことで、アウトプットの質は大きく変わってくると感じています。

いつも反省するのですが……広告主というのは、一つの広告にいろいろなことを詰め込みたがってしまうもので(笑)。「1クリエイティブ1メッセージ」が原則だということはわかっていて、そのつもりでつくり始めるのですが、最後にはあれこれぶら下げてほしいと要望してしまう。

手島・戸練 (笑)。

佐々木 広告主が考えることとクリエイターが考えること、視点の違いは当然あると思います。議論を重ね、互いの意思や価値基準を理解し合い、ギャップを刷り合わせながらアウトプットをつくり上げていきたいと考えています。

私は、クリエイターの言語化能力の高さには感服していて。経営層を説得する際にも、その力をお借りすることが多々あります。大きな経営判断を推し進める力をも持つプロフェッショナルと強固な関係を築くためには、目的意識を共有することが一番だと思います。

一つ伺ってみたいのですが、クリエイターの方って、広告主の最終的なKPIの達成状況は聞きたいものですか?聞きたくないものですか?

手島 僕は聞きたいですね。一度つくったクリエイティブで問題なく効果が出ればそれが一番ですが、仮に上手くいかなかった場合、どこに問題があったのかを検証し、改善した上でもう一度やり直すことが大切です。顧客の心をつかむために、広告主とクリエイターは結託し、“共犯関係”になって取り組むべきだと思っています。

黒崎 メディアとしてもぜひ聞きたいところですね。我々テレビ放送局は、多くの出稿をいただき、毎日たくさんのCMを放映しています。しかし一方で、広告主がどんな目標をもってそのCMを打ち出しているのかはなかなか把握しにくいのが実情です。

各キャンペーンにKPIがあり、その達成度で広告効果が評価されていると思いますが、我々がKPIやその達成度を知るのは難しい。メディアと広告主の間には、広告会社やハウスエージェンシーがいて、僕らからは広告主企業のマーケターの姿が見えづらく、少し大げさに言えば“近づいてはいけない存在”くらいの感覚があります。

メディアとしても、広告主・広告会社から達成したい目標を共有いただき、実際の出稿効果を定量データも含めてご提示し、何が足りなかったかを検証し、次のアクションを考え実行していくことに、一緒になって取り組んでいきたいと考えています。

佐々木 すべての効果を定量化できるわけではありませんし、定量化できるものばかりが効果ではないとも思います。さらに、クリエイターは信念を持ってクリエイティブをつくっているとも思うので、効果だ、KPIだと言いすぎるのはよくないのではと、悩むこともあります。

手島 もちろん「これだけは」という信念もあると思うのですが、広告主の目指す行き先も知らずに、信念も何も……という感じはしますよね。こればかりは「人によります」という感じだと思うのですが(笑)、僕は聞いたほうがいいものがつくれると思います。

戸練 昔は、「自分の作品をつくる」と平気で言うクリエイターもいましたが、時代は変わり、広告主の目標・目的地を重視しないクリエイターはかなり少なくなったと思います。広告主の中長期的な目標、そして施策毎のKPIを踏まえた上でクリエイティビティを発揮するのが、全うなあり方ですよね。

谷口 佐々木さん、今後はKPIの達成状況を皆さんに率直にお伝えしてよさそうですね!

分断3 メディアの視点
「広告メニューの共創」に活路あり

谷口 広告主が、まだ見ぬ未来のお客さまと接点を持つためには、メディアを活用する必要があります。顧客になる前の生活者との接点を持っているメディアとの連携が、マーケティング活動には不可欠と言えます。

広告主や広告会社、クリエイターなどさまざまな立場の方と連携してメディアビジネスを進めていらっしゃると思いますが、黒崎さんのお立場から、広告に関わるステークホルダーとの関係性について課題を感じることはありますか。

黒崎 一番の課題は、選択肢が爆発的に増えているということです。変化の大きさとスピードに、選択肢を提供する側である我々も追いついていかねばなりません。施策の目的に応じて選択肢の最適な組み合わせ方を考え、媒体価値を最大化して提供する必要があります。

谷口 テレビ放送局は、広告枠を提供する媒体社でありながら、広告会社と同じクリエイター 集団でもあります。魅力的な資源をたくさん持っていて、広告主に提供できる価値はさまざまなものが考えられますよね。

黒崎 その通りなのですが、地上波放送が免許事業であるがゆえ、さまざまなルールの下でビジネスを行う必要があり、それがクリエイティブの幅を制限してしまうことも多いのが悩ましいところです。

たとえば「本編の中で商品・サービスを露出してほしい」という要望をたくさんいただくのですが、「広告と本編は明確に区別しなければならない」というルールの中で、いかにそれを実現するか、試行錯誤し続けています。

試行錯誤を経て生まれたメニューの一例として、最近、番組セットを使って撮影するCMが非常に好評です。データを見ても、通常のCMよりも効果的に認知向上・ブランドリフトできるという結果も得られています。こうした、コンテンツの力を活かした広告企画をいかに進化させていくのがカギと言えそうです。

谷口 免許事業であるがゆえ、入稿のタイミングや広告審査など、広告主やクリエイターからすると「もう少し柔軟にできないものか」と思ってしまいそうなルールも多々ありますが、なかなかすぐには変えられないことも多いですよね。

黒崎 日本テレビ1社で済むことであれば、もっといろいろ柔軟に対応できると思うのですが……。地上波テレビCMのいいところは「全国の地上波テレビ局に、同じように出稿できる」という点にもあります。そのためにはやはり共通のルールが必要になってきます。

谷口 佐々木さんも、マーケティングにおいてテレビを活用されることがあると思いますが、広告主のお立場からテレビというメディアについて思うところはありますか。

佐々木 先ほど好評とお話しされていたインフォマーシャルは、昨年から積極的に活用しています。広告クリエイティブの話題のときに「広告主は、ついいろいろと詰め込みたくなる」と言いましたが、通常CMの15~30秒ではどうしても伝えきれないファクトをインフォマーシャルで伝え、理解促進を図っています。効果を実感しているので、これからもぜひこうしたメニュー開発をお願いしたいです(笑)。

また、黒崎さんからもお話がありましたが、キャンペーンの効果検証もぜひご一緒したいと考えています。デジタルの世界では、緻密なターゲティングや効果分析がどんどん進んでいます。日本テレビはコア視聴率()を業界でも比較的早く導入されるなど積極的な姿勢をお持ちだと思いますので、ターゲティング精度の高い広告メニューの開発も進めていただけるとありがたいですね。

※コア視聴率
各局によって定義は異なるが、おおむね「男女4~59歳」までのいわゆるファミリー層の視聴率を指す。消費意欲が旺盛で、今後も顧客となる可能性が高い若年層がどれだけ視聴しているかを測る指標と言える。

黒崎 ご意見をいただきつつ、できるものからどんどん実現していきたいと考えています。地上波放送だけでなく、TVerでの見逃し配信や、YouTube配信、Twitter連動企画など、さまざまな打ち手を用意しており、ターゲットに合わせた最適な組み合わせをご提案したいと考えているので、ぜひ「こういうやり方はどうか?」「もっとこうできないのか?」といったご意見をいただけると非常にありがたいです。

谷口 お立場の異なる皆さんですが、こうして一堂に会してみると、垣根を超えて上手く連携していけそうな予感を覚えます。やはり、日頃なかなか対話する機会がないことが、分断の解消を遅らせる原因になっていそうですね。

黒崎 そうですね。佐々木さんからもいただいたように、「こんなことができないか?」という広告主の要望・ニーズは、対話を重ねることでさらに多様なものが出てくると思います。対話の機会を増やすことで、実現に向けて動いていきたいです。


先行き不透明な今の時代は、分断解消の好機

谷口 異なるお立場からのお話を通じて、現在の「分断」がどこにあるのか何となく見えてきたように思います。一方で、今日ご登壇いただいている理事の皆さんは、その分断を乗り越えようとすでに取り組みを進めていらっしゃる方ばかり。この分断が近い将来、解消に向かっていく兆しを感じることができました。

さまざまな分断が解消された先には、どんな未来が見えてきそうでしょうか。

手島 一つ成功例が生まれると、それに対するアンチが生まれる。結合の先に分断は生まれるもので、分断と結合は繰り返されるものだと思います。ただ、今日のディスカッションを経て、分断していて見えていない場所に自分ができること・試してみたいことがまだまだたくさんありそうだと、可能性を感じることができました。

今日のお話の中もいろいろなヒントがありました。たとえば、番組セットを使ったインフォマーシャルにはすごく興味が湧いたんです。でも一方で、「自分の領域じゃない」という固定概念があることにも気づいた。そういう固定概念を取り除くことで、もっと面白いことができそうだと思いましたね。

戸練 広告主、広告会社、クリエイター、メディア。それぞれに分断はありますが、とりわけクリエイターとメディアが直接話す機会は非常に少ないことに気づかされました。また、黒崎さんのお話にもありましたが、「広告主とメディアが直接話すべきではない」という暗黙のルールのようなものが、いまだに根強く残っていることも印象的です。

手島さんと黒崎さんが膝を突き合わせて打ち合わせをする――そんな絵は今まではなかなかイメージが湧かなかったけれど、それが自然に行われるようになったら、マーケティングの新しい地平が見えてくる気がしました。

佐々木 戸練さんがおっしゃったことが、私の一番の「野望」であり「夢」なんです。まさに今日ここにいる4領域が一堂に会して施策を共に評価することで、今までにない化学反応を起こしたい。そのために、互いにノーガードで殴り合える環境がつくれたらいいなと思っています(笑)。

黒崎 広告主やクリエイターとメディアが直接話してはいけないというルールはもちろんありませんが、長年の商習慣の中で、いつしかシステムが固定化してしまった部分はあるかもしれません。

一方、デジタルの登場によって、さまざまな広告手法が変化を余儀なくされたり、新しく生まれたりしています。先ほど話に出たインフォマーシャルをはじめ、「クロス・プログラム・プロモーション()」のプロジェクトにおいては、日本テレビの制作と渉外、広告会社、広告主が連携することが不可欠です。新しい手法や広告商品を考えることで、関係者の座組みや関係性も変わってくるのかなと思います。

※クロス・プログラム・プロモーション
CM枠や番組本編、Web、SNSなどを組み合わせて“面”でプロモーション展開する提案型の商品。

谷口 お互いに何となく遠慮があったり、長年の商習慣の中で「それはダメだ」と無意識に思い込んでしまっていることも多々ありそうですね。そんな見えない壁を取り払って話してみることで、意外なほどすんなりと変わっていくこともありそうです。それがまさに、Borderless Marketing Community(BMC)の役割の一つだと思います。

最後に、今後のBMCに期待することを、それぞれお聞かせください。

手島 “殴り合い”ですよね(笑)。パンデミックも背景に、さまざまなことが混沌状態になっている今は、ボーダレスな取り組みを始める好機だと思います。先行き不透明で、誰も未来が見えない中、できるだけ早く具体策を出せるといいなと思います。

それが無事成功しても、何か反省点があったとしても、トライアンドエラーなくして新しい考え方・やり方は生まれない。BMCの活動に期待しているし、参加できることを嬉しく思っています。

戸練 長年広告に携わっている者として、ここ数年の広告業界の停滞は非常に気になっています。若い人にとって憧れの業界ではなくなっているし、今までは世の中に出ていなかったさまざまな問題も噴出しています。それぞれの広告会社が自社の利益のみを追求するのではなく、産業界全体を底上げする装置になって、日本全体を盛り上げていく――BMCの発足は、そんなポジティブな業界へと変わっていく好機にもなるのではと期待しています。

佐々木 専門性の高いプロフェッショナルが一つのビジョンの下に集まり、分断を超えていく取り組みは非常に興味深いです。活動を通じて、ぜひ具体的なロードマップや打ち手がつくれたらと思っています。

黒崎 今日この場だけでも、実に多くのヒントがありましたし、視野が広がった感覚があります。これを機に、いろいろな方のいろいろなご意見をできるだけ広く聞き、我々ができることは何なのか自問し、成長していくきっかけにできればと思っています。

谷口 生活者にとっては、オンライン/オフラインも広告/PRも関係なく、どれも同じ体験。まさにボーダレスです。

真に生活者視点に立ったマーケティングを実現するために必要なこと。それは、異なる立場のプロフェッショナルが手を組み、社会・生活者にとっての価値をつくり出す共同体となることなのだと、あらためて気づかされました。